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1. 事業概要

  • 事業名称:ケニア農村部でのアボカド品種改良とサプライチェーン強化による所得向上事業
  • 実施地域:ケニア共和国(ボメット郡、ミゴリ郡)

2. 年度内の主な活動実績と検証内容

2024年11月から2025年10月にかけて、技術移転、組織基盤構築、および市場調査の「検証フェーズ」として以下の活動を実施した。

年月主な活動内容実施詳細と検証によって判明した事実
2024年11月国家機関等の訪問ケニア国家農業研究機関(KALRO)およびジョモ・ケニヤッタ農工大学(JKUAT)を訪問。現地のアボカド品種改良に関する技術水準とサプライチェーンの初期課題を把握。
2024年12月苗育成の開始(初回検証)ボメット郡・ミゴリ郡にて、それぞれ200本ずつの種をポットに植え付け、台木用苗の育成を開始。
2025年3月国内サプライチェーン調査ケニア国内のアボカド輸出企業を調査。
【検証結果】 国内の買取価格は非常に安く、市場は飽和状態にあることが判明。国内流通のみでは農家の劇的な所得向上は困難であると結論付けた。
2025年4月接ぎ木作業・育苗の拡大2024年12月に植えた台木への接ぎ木、および追加150本分の種付けを実施。
2025年7月現地研修とデモファーム整備日本側理事2名がケニアに渡航し、KALROの指導のもと現地メンバーへ接ぎ木技術の研修を実施。優良苗をデモファームに植栽し、農家研修用拠点を整備。
2025年9月中東市場調査の実施ドバイへ渡航し、輸出に向けた市場調査および販路開拓を実施。
2025年10月出口戦略の再定義と次期申請当初計画していたアボカド油の市場開拓は、設備投資額の高さと市場の偏りから見送り。生鮮果実の輸出、特に欧州市場へのシフトを決定し、活動継続のための賞金・助成金申請等を実施中。

日本人アボカド農家(茨城県日立市 Pieces’ Farm代表)によるケニア現地での接ぎ木研修

ドバイ市場調査

3. 検証から浮き彫りになった課題

本年度の検証により、当初想定していた技術移転や組織化の難易度を遥かに超え、専門性の高い人材が長期にわたって密着して関わる必要性が明らかになった。具体的には以下の3つの領域において、大きな課題と対策の必要性に直面している。

① 栽培管理・生産現場におけるリアルな技術的課題
生産現場では、仕入れた苗の品質、土壌の質、および栽培管理(病気予防等)の不足により、以下のような致命的な課題が発生した。

  • 国家機関の苗の生存率課題:KALRO(国家機関)から仕入れた苗を農地に植栽したものの、初回作付け時は約50%が枯死。(本来25%以内に向上可能)環境適応への課題が浮き彫りとなり、新たな苗の再作付けを余儀なくされた。
  • 自社接ぎ木苗の発芽率課題:自ら種を仕入れて台木に接ぎ木を実施したが、初期の発芽率は約50%にとどまった。発芽率が50%であることは低い数値ではないが、発芽が失敗すれば細かに何度も接ぎ木をやり直すという作業工数があることがわかった。
  • 気候・病害虫リスクの露呈:アボカドが干ばつに対して極めて脆弱であること、種付け時には非常に柔らかい土壌選定が必要であること、そして病害虫に弱いことが実証された。特に当法人が目指すオーガニック栽培を達成するためには、特定の厳格な管理体制の構築が不可欠であると分かった。

② 市場環境の現実(国内市場の飽和)
ケニア国内のアボカド市場は供給過多に陥っており、取引価格は非常に安価で飽和状態にある。そのため、単に生産量を増やすだけでは農家の所得向上には繋がらない。

③ 出口戦略の再考(中東からEU市場へのシフト)
飽和する国内を避け、ドバイでの市場調査を行ったが、ドバイ市場はオーガニック認証やその他付加価値(認証系)による価格プレミアをつけにくい環境であることが判明した。

農家から適正価格・固定価格で持続的に買い取るためには、フェアトレード等の認証を高く評価し、プレミアム価格で受け入れる市場への接続が絶対条件となる。

4. 今後の戦略および次年度計画(2026年)

上記の実績と課題を踏まえ、当法人は生産サイドの栽培管理の徹底指導と、出口サイドのEU市場の開拓にリソースを集中させる。

  • 短期(出口戦略の現場検証)2026年5月、欧州の農産物流通ハブであるオランダへ渡航。EU市場が求める青果品の品質基準やロット、認証基準等(Global Gap、オーガニック認証、フェアトレードその他)について現場検証を行った。どのような栽培・品質を達成すれば、ケニアの小規模農家のアボカドが安定した価格で売れるのか、出口の確定を最優先した調査を進める。
  • 中期(伴走型サプライチェーンの構築) すでに輸出適格のアボカドを生産しているケニア国内の先行地域からアボカドをテスト買い取りし、確立したEU販路へと流すロジスティクスの構築を並行して行う。
  • 長期(技術指導の仕組み化と自立) デモファームを拠点とし、専門家が長期密着できる体制(農家のグループ化やパートナーシップの締結)を整備。本年度に発覚した「発芽率50%」「枯死率50%」という課題を克服するための、オーガニック栽培マニュアルを現地リーダーと共に確立していく。